「なーなーなー」 あーもーうっせーな。俺についてくんなよ、くっつくなよ、そんな顔で見るなよ。俺は面倒臭そうに、お預けをくらった犬みたいにつまらなさそうな目をしているキバを見る。 …俺にどうしろってんだよ。まあ恐らく遊んでほしいんだろうな。それは俺流の遊びじゃなくって、ガキが好きそうな…いや、犬が好きそうな追いかけっことか、そんなの。 キバも赤丸もナルトと同じでじっとしているのが嫌いなタイプだ。だからまあ…うるさいのもダラダラと甘えてくんのも仕方ないんだけど。 (…いや、赤丸はどうかな…?一応優秀な忍犬だからな) いやいや違うって。そういう問題じゃなくって。俺が駄目なんだってば。いや、駄目っていうか…俺が耐えられるかっていうか…。 あーもう訳分かんなくなってきた!まあなんだ…アレなんだよな。俺はこいつの親友なんだよな。うん、そうそう。 だからキバは俺にスキンシップを取ってるだけなわけだよな、恐らく。いや、絶対そうなんだって。別に特別視する必要はないんだよ、俺! あーもー駄目っぽい。なんか動悸が収まらねえもん。 「…シカちゃーん?聞いてんの?」 聞いてるわけねえだろーが!もう俺の頭ん中はそれどころじゃねーの!ていうか、わっ、だ、だからくっつくなっての!!馬鹿だろお前! ていうか全然分かってねーわ。つーか気付いてねえよな。だって完全に無防備だし。1ミリも警戒してねーし。寧ろ安心しきってるし。 …うん、まあそれはそれで嬉しいんだけどよ。 いや、でもちょっとは警戒してくれよ。俺は範囲外みたいなさ…、なんか切なくなってくんじゃんよ。あーでも男なんだから男が範囲外でも当たり前か。 (あーあーあー!自分で言ったくせに胸に刺さった!ぶろーくんはーと!) 「オイコラ!デコマル!!」 「…誰がデコマルだ、ばーか」 「なんだよ、ちゃんと聞こえてんじゃん!俺、てっきりお迎えが来ちまったのかと…」 「いや、早ェだろ」 「いやいや、分かんないよ?シカマルっていっつも空ばっか見てるし、その内ひょこっと死神さんに魂抜かれそうじゃん?」 「キバお前…」 なんてロマンチストなんだ! 死神さんって…!ちょっとときめいちまっただろ! な、なんだよ馬鹿!そんな呆れた目で見なくてもいいだろ!なんて必死に弁解してるキバを凝視した(かわいすぎて) うわー、もう絶対天使とか信じてるぜ、こいつ。もー、馬鹿!ほんっと馬鹿!馬鹿馬鹿馬鹿!馬鹿すぎる! (そこがまた好きで好きでたまらない!) あーもう駄目だ。抑えられない。言っちゃおうかな、いっその事。そしたらお前どんな顔するかな?気持ち悪いって、もう一緒にいてくれなくなんのかな? それはやだなー…。出来ることならいつまでも、一緒にいたいんだよな。もっとわがままを言えば、相思相愛のまま。 …うん、末期だ俺。つーかまだ相思相愛になってないし。それ以前にキバに好きなやつがいたらどうすんだよ。…あ、しまったそれを忘れてた。 そういえば最近ナルトと一緒の任務多いよな。まさかナルトか?いや、それとも案外ネジ辺りも怪しかったり?…ハッ!まさかまさかまさか!カカシとか?! …ってなんで全部男なんだよ。落ち着けよ、俺。ま、でも女じゃ勝ち目はねーな。男が女を好きなるなんてごく普通のことだけど。 ていうかこいつは俺のことを親友だと思ってんだよ、それを忘れんな俺! 昔ハッキリ言われたもんなー…、『俺、シカマルのこと親友って思ってる!』って。そりゃもう嬉しそうに、照れくさそうに。 あー…段々気分が落ちてきた。 「…シカマル?大丈夫か?」 「えっ、な、にが?」 「え、いや、なんかぼーっとしてたし」 「そ、そうか?気のせいじゃね?」 危ない危ない。なにより俺の脳内が危ない。マジでキバが言ったようにお迎えがくるかもしれねーわ。 俺は、ふう…と息を吐き出し、兎に角自分を落ち着かせた。 (愛しの君に心配かけるわけにはいかないから!) 「つーかさー、シカちゃん最近俺に冷たくね?」 んんん?!なに?!キバ、お前いつからそんなに鋭くなったんだ!いや、はは、本当落ち着け俺。相手はキバだぜ?ちょちょいと適当なこと言っておけば…。 「んなことねーよ。普通だろ?」 「…いんや冷たい。俺が近づこうとするといっつも手で払うもん」 「え?!そ、そうか?あー多分そりゃ暑いからじゃね?」 「…そうだとしても、最近絶対冷たい!俺を突き放そうとしてんだろ?!」 ナンセンス!…じゃねえ、勘違いしてるぞキバくん!俺は突き放したいんじゃなくて、寧ろお前の側にいたいんだって! 「…シカマル、俺といんの、嫌?」 「は?!嫌なわけ、ねーだろ…!」 「…でも、俺といる時のシカマル、いっつも辛そうな顔してんじゃん」 「!!!」 やっべ、バレてた!そりゃ辛い顔もすんだろーがよー!お前が好きで好きで、しょーがねえんだから!あーもー面倒臭ェ! (大好きなのに、届かない!) 「やっぱシカマル、俺の気持ちに気付いてたんだな…。」 「………え?」 「…ごめん、俺、男なのに…気持ち、悪いよな…」 え?!え、え?ちょ、すとっぷ!なんの話なんだキバくん!つーか何?それってまさか…?! 「…っごめ、俺、もう近づかねえようにするから…、じゃあ…」 ちょ、ちょっと待ってくれってキバ!あーもうしっかりしろよ、俺!男だろ?!キバにここまで言わせておいて、はいさよならなんて出来るかよ! (俺の愛が少しでも君に届けば!) 「ちょ…、き、キバ!!」 「…っ!!な、んだよ…」 あ…、キバが、泣いてる。あの、意地っ張りで強がりなキバが、…俺のために?あーこれってなに?自惚れてもいいんだよな、確実に。 「…キバ、俺ァ面倒臭がりで適当なやつなんだよ」 「…知ってる」 「(それもさみしい…)んで恋だ愛だってのも面倒臭くてずっと避けてた」 「……うん」 「でも…なんだ…、こんな俺でもやっと面倒臭いとか、まあ多少は思うけど、それでも他の奴より全然思わねー奴ができた」 「…そっか…」 あーあーあー!キバが段々沈んできてるじゃねーか!しっかりしろって俺!こんな顔、させたかったわけじゃねーのに。 「お前なんだって!」 「……へ?」 「だから!そいつがキバ、お前なんだっつの!」 「…つまり?」 あまりの恥ずかしさに顔を火照らせながら、一度息を吐いて、よく聞いてろよ?なんて、あたかも一度しか言ってやんねえとでも言う言い回しをして、少し大きな声でキバの間抜けた目を見つめて言った。 「だからつまり、 君が僕の特別 だっていうこと!」 (っはは!わっかりづれー!) (うっせーな、こーいうの苦手なんだっつーの!) (へへっ!ま、お前が俺のこと好きなのなんか知ってたけどな!) (嘘付け、ばーか)
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